建設業界NEWS

建設業界NEWS · 2023/07/06
 技能者の資格や経験を統一仕様で登録・管理する建設キャリアアップシステム(CCUS)。2018年5月の登録開始から5年、登録済みの技能者は119万人、事業者は22万者を超え、技能者の処遇改善を後押しする制度インフラとしての理解は着実に進んでいる。技能者のレベルに応じた年収額の目安も公表され、CCUSの機能を生かすための取り組みは新たな局面を迎える。  国土交通省は先月、CCUSの四つのレベル別に試算した技能者の年収額を公表した。公共事業労務費調査を基礎データに技能者の経験年数や保有資格に基づきレベルを振り分け、バーチャルな形でレベルに応じた賃金上昇の青写真を示している。  長橋和久不動産・建設経済局長は「登録者数は増えているが、能力評価(レベル判定)の進捗(しんちょく)が道半ばのため、レベルに応じた処遇改善の姿が見えない」と現状認識を示す。総務省の労働力調査の技能者数をベースにすると、CCUSに登録済みは4割程度まで達している。ただし登録技能者の構成比をレベル別に見ると、現場労務の主力を担うレベル2以上の取得者は1割に満たず、能力評価が浸透していない。  「登録者数がまだ少ない時期ならともかく、100万人を超えてきたからこそ、実際に登録し使うことで何がどう変わったかが見えてこなくてはいけない」と長橋局長。カードタッチによる就業履歴の蓄積と能力評価の促進を通じたCCUSの機能発現が急がれる中、年収額の公表を決断したのは、技能者の処遇改善という「CCUSの本来の目的を最も分かりやすく示したかった」ためだ。  技能者が自らの処遇を相対的に捉え直し、将来の見通しを描く--。同省がレベル別年収を公表した最大の狙いは、将来の入職者を含めた若い世代にCCUSで目指す処遇面の具体像を見せることにある。技能者のスキルや経験に応じた「賃金支払いの具体的なイメージ」として共有してもらえるよう、業界全体に働き掛ける考えだが、技能者本人への周知に最も重点を置く。  レベルごとの年収額は一定の幅を持って示されている。長橋局長は同程度の現場経験や資格を持つ技能者との比較で、一人一人の技能者が処遇面で「自分の立ち位置に気付き、確かめられる」と効果を説明する。「これから業界に入ってくる人が不安を解消するために5年、10年先の姿を見せることが必要」と強調。加えて「一日一日積み重ねた経験を評価し、処遇として保証することが雇用や収入の安定につながる」とも見ている。  業界関係者にはレベル別年収を一つの目安とした賃上げや、適正価格での受発注を期待する。その上で「行政として請負契約の中でレベル別年収で示したものを実現できるよう措置しなければならない」と気を引き締める。国交省は民間主導で賃金水準の底上げを図りつつ、中央建設業審議会(中建審)の議論を踏まえ、適切な労務費が行き渡るための制度的な対応に当たる考えだ。
建設業界NEWS · 2023/06/19
 国土交通省は建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価(レベル判定)制度で、就業年数やマネジメント経験を「経歴証明書」で評価できる期間を2024年3月31日までと明確に定めた。それまでに証明できる年数・経験であれば、29年3月31日まで能力評価申請書の提出を認める。24年4月以降の年数・経験は原則としてCCUSに蓄積された就業履歴でなければ能力評価に反映されなくなる。  所属事業者などが作成する経歴証明書の活用は、現場でのカードリーダーの設置など就業履歴を蓄積できる環境が一定程度整うまでの経過的な措置として認められている。経歴証明書を活用した能力評価申請書の提出を24年3月31日まで認める従来規定を見直し、この期限を5年先延ばしにした上で、経歴証明書で証明可能な期間を明確化した。14日に改定した「建設技能者の能力評価制度に関するガイドライン」に明記した。  国交省は建設業振興基金(振興基金、谷脇暁理事長)と連携し、あらゆる現場で就業履歴を蓄積できる環境整備を急ぐ。カードリーダーの設置負担を軽減するため、年内にも安価な機器の利用環境を整える。就業履歴登録アプリケーション「建レコ」を改修し、最も安くて3000円程度の機器にも対応可能とする。  振興基金はCCUSに新規登録した元請企業にカードリーダーを無償貸与する取り組みを継続する。就業履歴を蓄積できないという技能者や下請の相談をメールで受け付ける専用窓口を開設し、無償貸与の情報提供など相談内容に応じたサポートに取り組む。
建設業界NEWS · 2023/06/16
 国土交通省は建設キャリアアップシステム(CCUS)レベル別年収の試算結果を公表した。2022年10月の公共事業労務費調査で把握した技能者の賃金実態を踏まえ、能力評価(レベル判定)を行っていない技能者も相当するレベルに振り分けた上で算定。職種に関係なく試算結果を見た場合、例えばレベル3の中間程度に当たる年収は628万円となる。若い世代にとって処遇面のキャリアパスを明確に示し、これを念頭に適切な賃金を行き渡らせる対応を業界関係者に働き掛けていく。=2面に各職種のレベル別年収の一覧 レベル別年収は公共工事設計労務単価と同じく必要な費用を反映し、週休2日を確保した労働日数(234日)で算定。能力評価を行っていない技能者は、経験年数と保有資格を基に▽レベル1相当=5年未満▽レベル2相当=5年以上10年未満▽レベル3相当=10年以上または1級技能士▽レベル4相当=登録基幹技能者-と推定し試算に組み込んだ。 設計労務単価と能力評価の職種が合致する32職種ごとの年収も公表。レベルが同じでも年収分布にばらつきがあるため、各レベルの上から15%程度を「上位」、50%程度を「中位」、85%程度を「下位」として年収額を示した。 産学官で構成する「CCUS処遇改善推進協議会」の15日の会合で国交省が説明した。長橋和久不動産・建設経済局長は登録が伸びる一方で能力評価が道半ばという中、レベルに応じた処遇改善の絵姿を示す重要性を強調。客観的指標に基づくレベル別年収を公表することで「業界全体で技能や経験に応じた賃金支払いの具体的なイメージを共有し、賃上げや適正価格での受発注につながることを期待する」と述べた。 会合では担い手確保の観点から多くの建設業団体がレベル別年収を踏まえた処遇改善に期待を示した。一方、元請が下請に支払った労務費が技能者に行き渡る担保策や、賃金の原資確保に向けた民間発注者の理解の必要性を指摘する声も上がった。 国交省は中央建設業審議会(中建審)の議論を踏まえ適切な労務費の確保に向けた制度的な対応を検討していく方針だ。
建設業界NEWS · 2023/06/02
10月に導入される消費税の仕入税額控除の新方式「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」を巡り、建設産業専門団体連合会(建専連、岩田正吾会長)は一人親方などの免税事業者との取引の機会が多いとみられる専門工事会社の準備状況を調査した。制度導入を1年後に控える時点で、免税事業者との取引に関する今後の対応方針が未定だったのは4割程度を占める。まずは取引先と十分に話し合って適切な対応につなげることが重要だ。 調査は建専連傘下の専門工事34団体の所属企業とその下請企業が対象。制度導入まで1年を切った2022年10月24日~12月16日に調査票827件を回収した。 インボイス制度が導入されると免税事業者との取引では仕入税額控除を行えなくなる。課税事業者に転換してもらえば控除は可能になるが、その場合は取引先の事業者に新たな税負担が生じる。制度導入後の税負担の在り方を前もって決めておかなければ混乱が生じかねない。 建専連の調査によると、取引先に占める免税事業者の割合は▽8割以上=10・1%▽5~7割=5・9%▽2~4割=13・7%▽1割以下=22・3%-で、半数以上は免税事業者と取引関係を持っていた。主要な許可業種が「内装仕上げ」や「大工」の企業は、他業種よりも免税事業者との取引が多い傾向がある。 免税事業者との取引に関する今後の対応方針は、一人親方の場合▽課税事業者に転換してもらい取引を続ける=34・6%▽免税事業者のまま取引を続ける=19・7%▽社員として雇用する=0・9%▽取引をやめる=0・9%▽分からない=41・2%。 一人親方ではない免税事業者の場合は▽課税事業者に転換してもらい取引を続ける=44・8%▽免税事業者のまま取引を続ける=15・4%▽取引をやめる=0・9%▽分からない=37・7%-だった。 今後の対応方針で2割程度だった「免税事業者のまま取引を続ける」と回答した企業のうち、控除できない消費税相当額を自社で負担する形で「従来通りの価格で取引する」との回答は59・3%で半数を超えた。「消費税相当額を値引いた価格で取引する」との回答は30・8%だったが、主要な許可業種が「内装仕上げ」の企業の回答割合は7割超に達し他業種より多かった。
建設業界NEWS · 2023/05/26
建設産業専門団体連合会(建専連、岩田正吾会長)が傘下の会員企業に実施した調査で、適用まで1年を切った時間外労働の罰則付き上限規制への理解や対策が不十分な実態が分かった。規制内容を4割以上の企業が理解できておらず、内容を知っていても2割以上は「順守は困難」と回答。業務内容や工程の見直しなど自社で対応する動きがある一方、工期の適正化や平準化に元請の理解を求める声も多い。=2面に関連記事 建専連傘下の専門工事34団体の所属企業とその下請企業から2022年10月24日~12月16日に調査票827件を回収し分析した。18年度から週休2日の実態などを継続的に調査してきたが、近く対応を迫られる時間外規制への対応状況を新たに聞いた。 時間外規制の認知度や理解度は「内容まで知っている」が58・0%、「聞いたことはあるが内容は分からない」が31・7%、そもそも「知らない」が10・3%だった。請負階層が2次以下、社員数が10人未満、主要な許可業種が「塗装」か「内装仕上げ」に該当する企業は、それぞれ半数以上が規制内容まで理解できていなかった。 規制内容を知っている企業に順守可否を聞いたところ「十分可能」が27・9%、「かなりの努力が必要だが可能だと思う」が44・6%、「順守は困難」が22・1%、「どちらとも言えない」が5・4%だった。こうした回答の比重は企業規模別や許可業種別でもほぼ共通していた。 時間外削減の取り組みは「業務の内容・分担・工程の見直し」が46・6%で最も多く、職員の意識改革や経営トップによる定時退社の呼び掛け、取引先への協力依頼といった回答が続く。自由回答では適正な工期確保とともに、労働日数の減少分を賄うための単価引き上げの必要性なども多く指摘された。
建設業界NEWS · 2023/05/25
国土交通省は24日、2022年度末(23年3月末時点)時点の建設業許可業者数を発表した。総数は47万4948業者。前年度末に比べて0・1%、345業者の減少だった。直近まで4年連続の増加で業者数が底を打ったとの見方があったが、新規に許可を取得した業者数が低水準だったことから5年ぶりの減少となった。コロナ禍の長期化や建設資材の価格高騰など不安定な経済情勢を反映し、新規取得が伸び悩んだ可能性がある。 新規の許可取得は1万6404業者(前年度比12・8%、2402業者減)。過去10年で見ると13年度の1万5738業者、18年度の1万6245業者に次いで3番目の低水準だった。 許可失効は1万6749業者(4・1%、716業者減)で、内訳は廃業を届け出たのが7476業者(7・0%、567業者減)、更新手続きを行わなかったのが9273業者(1・6%、149業者減)だった。 許可業者の総数は1999年度末の60万0980業者をピークに減少に転じ、ここ10年はほぼ横ばいの47万業者前後で推移。平成以降で最少となった17年度末の46万4889業者を底に、直近は4年連続で微増していた。 許可業者数のうち、一般許可は45万0146業者(0・2%、755業者減)、特定許可は4万8365業者(1・1%、542業者増)。複数業種の許可を受けている事業者の割合は53・7%(前年度比0・4ポイント増)、建設業以外の事業を手掛ける兼業業者の割合は29・3%(0・3ポイント増)だった。 29の業種区分のうち前年度末から取得業者数が増加したのは24業種。増加数が最も多かったのは「解体」の2447業者(3・9%増)で、次いで「塗装」が2052業者(3・0%増)、「鋼構造物」が1880業者(2・2%増)。減少数のトップは「建築」の2090業者(1・4%減)だった。 許可業者数を資本金階層別に見ると、中小企業者(個人と資本金3億円未満の法人)の数が47万2540業者で全体の99・5%を占める。うち「個人」は6万8274業者(3・7%減)と初めて7万人を割り、構成比も14・4%と過去最低を更新。ボリュームゾーンとなる「1000万円以上5000万円未満」は16万0457業者(0・9%減)で構成比は33・8%。
建設業界NEWS · 2023/05/17
建設資材の価格動向を数値化している経済調査会(森北佳昭理事長)の「建設資材価格指数」が、全国の建築・土木総合で2カ月連続の下落となった。2015年度の全国平均値を「100」とした場合、直近の4月10日時点の調査に基づく指数は前月に比べ0・6ポイント下回る「147・8」となった。建築用木材や型枠用合板の全国的な続落が要因。ただセメントの騰勢が続くなど、資材価格の高止まり傾向は変わらない。 指数を建築・土木別に見ると、建築指数は木材市況下落の影響を受け1・1ポイント下回る「154・0」だった。土木指数は全国的にセメントの騰勢が続いている影響に伴い0・3ポイント上回る「137・8」。32カ月連続で上昇したことになり、2年半を超える異例の長期上昇が続いている。 最新の5月調査(10日時点、『積算資料』6月号)でまとめた東京地区の主要資材15品目単価動向を見ると、先行き気配「強含み」がセメントの1品目。「横ばい」が▽異形棒鋼▽H形鋼▽生コンクリート▽再生クラッシャラン▽軽油▽ガソリン▽再生加熱アスファルト混合物▽ビル用アルミサッシ▽板ガラス(フロート板ガラス)▽CVケーブル▽硬質ポリ塩化ビニル管-の11品目で、「弱含み」が海外相場下落の影響もある鉄スクラップとコンクリート型枠用合板、杉正角材の3品目となった。 15品目のうちセメント、生コン、ビル用アルミサッシ、板ガラス、CVケーブル、硬質ポリ塩化ビニル管の6品目の単価が過去最高値で推移している。 経済調査会によると、セメントメーカーの値上げ姿勢が依然として強い。東京地区では値上げの一部が浸透し、1トン当たりのセメント単価(普通ポルトランド〈バラ〉)は前月に比べ1000円高い1万3800円と過去最高値を更新した。こうしたセメントの騰勢を受け、各地区の生コン組合が値上げを打ち出している生コン市況の動向も注視する必要があるとみている。
建設業界NEWS · 2023/05/15
国土交通省は2024年度から適用する施工管理技術検定の新たな受験資格などを定める省令や告示を12日に公布した。第1次検定は学歴差を撤廃し門戸を広げ、1級は19歳以上で受験可能となる。第2次検定は1級、2級ともに「技士補」となってから一定期間の実務経験で受験可能とする。実務経験による技術者資格要件も見直し、一般建設業許可の営業所専任技術者などの要件緩和が23年7月から適用となる。 公布したのは「施工技術検定規則および建設業法施行規則の一部を改正する省令」と関連告示。 技術検定の受験資格は第1次検定が1級で19歳以上、2級で17歳以上と設定。第2次検定は「技士補」の資格取得後、必要な実務経験年数を1級で5年以上、2級で3年以上を基本とする。一定規模以上の工事で監理技術者などの指導下で施工管理を手掛けたケースを「特定実務経験」と位置付け年数短縮を可能とする。 従来の受験資格要件で28年度まで第2次検定を受験可能とする経過措置を運用し、24~28年度の間に有効な第2次検定受験票の交付を受けた場合に限り、29年度以降も引き続き第2次検定の受験を可能とする。専門性の高い学校課程修了者を対象に第1次検定の一部科目を免除する新たな制度の適用は29年度以降とする。 実務経験による技術者資格要件は、指定学科以外の卒業者の実務経験を短縮できる規定を追加。業種ごとの指定学科と対応する技術検定種目の合格者を指定学科卒と同等とみなす。
建設業界NEWS · 2023/04/05
国土交通省や建設業団体などでつくる建設産業人材確保・育成推進協議会(人材協、事務局・建設業振興基金)は、建設キャリアアップシステム(CCUS)登録技能者の能力評価(レベル判定)制度の利用を促進する新規事業を立ち上げる。専門工事業団体を支援対象に、能力評価手続きの実施体制の整備や技能者への周知活動、新たな能力評価基準の作成などを後押しする。助成金の交付要綱を今月か来月にまとめ各団体に周知する方針だ。 3月下旬に開いた人材協運営委員会で2023年度事業計画・収支予算を了承し、新規の人材育成事業予算として6000万円を確保した。人材協の新たな構成メンバーとして建設技能人材機構(JAC)と教育訓練校関係団体が加わり、新規予算分を振興基金とJACが支出する。政府が重点を置く「人への投資」の観点から外国人を含む技能者の技能習得やレベルアップに向けた環境を整える。 CCUSの能力評価に取り組む専門工事業団体への支援には4000万円を充てる。能力評価基準が策定済みの職種の場合、能力評価実施機関となる団体が審査人員を確保したり広報活動を展開したりする際に活用可能。基準未策定の分野では団体主導の基準作成を後押しするためコンサル委託費などを助成し、より幅広い分野で技能者の処遇改善の機会を創出する。各団体に数十万円程度が行き渡る方向で詳細を詰める。 全国各地の教育訓練校のニーズに応じた支援を強化するため「(仮称)教育訓練サポート事業」も立ち上げ、関係経費として2000万円を計上。教育訓練校の運営費や施設・設備費を助成する厚生労働省の既存制度には該当しない部分を補完する形で、カリキュラム開発や講師養成、訓練施設の改良・改修、工業系高校の教員向けの体験学習などを支援する。 これ以外にも産学官共同で担い手確保に取り組む母体として人材協に「若年者入職促進タスクフォース」を夏ごろまでに設置。国交、厚労、文部科学の関係3省に加え、教育訓練機関や工業高校、業界団体が参画し、優良事例の発掘・共有や地域の業界と高校関係者の連携円滑化に取り組む。
建設業界NEWS · 2023/03/30
国土交通省と建設業主要4団体は、技能労働者の賃金水準の上昇率として2023年に「おおむね5%」を目指すことを申し合わせた。過去2年に業界共通の賃上げ目標を掲げて成果を上げてきたことを踏まえ、大幅な引き上げとなった公共工事設計労務単価に相当する賃金が末端の技能者まで適切に行き渡るよう、それぞれの立場で可能な取り組みを実行する。時間外労働の罰則付き上限規制の適用が1年後に迫る中、週休2日の確保などにより工期の適正化に官民で取り組むことも併せて合意した。 斉藤鉄夫国交相と日本建設業連合会(日建連)、全国建設業協会(全建)、全国中小建設業協会(全中建)、建設産業専門団体連合会(建専連)の4団体が29日に開いた意見交換会で、国交省からの提案に各団体が応じた。 21年は「おおむね2%以上」、22年は「おおむね3%」の賃上げ目標を設計労務単価ベースでクリアしてきた。3月に適用した設計労務単価は全国・全職種の単純平均で前年度比5・2%の引き上げとなり、その水準に相当する新たな目標を設定することにした。 政府の物価・賃金・生活総合対策本部が2月に開いた会合では、岸田文雄首相が「設計労務単価の引き上げが現場に着実に届けられ、公共事業に参画する企業で働く方々の賃上げにしっかりつながるよう万全の対応を進めてほしい」と斉藤国交相に直接指示した。 この岸田首相の発言を引き合いに出し、斉藤国交相は「実現には現在の流れが地方自治体や民間の工事にも広がり、技能者の賃金水準の上昇につながる好循環が持続できるよう、官民一体となった取り組みの一層の推進が必要不可欠」と4団体の幹部らに訴えた。 斉藤国交相は時間外規制にも言及し「働き方改革の推進や生産性の向上が最重要課題」と強調。国交省として週休2日を前提とした工事発注に加え、厚生労働省と連携した民間発注者に対する工期適正化の働き掛けを強める考えを示した。

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